鯨漁の系譜(くじらりょうのけいふ)

太地町の古式捕鯨以前から現在までを振り返り、追い込み漁とのつながりを探る。

概要

絵巻物に描かれたスジイルカの姿太地町立くじらの博物館に収蔵されている、「鯨種類并ニ異形巻物」という絵巻物は、古式捕鯨が行われている頃に、現在の太地町周辺で捕獲されていた鯨や、その他の生き物が描かれています。
その中に、イルカらしき姿も描かれていました。
実は太地浦では、昔からイルカや鯨が捕獲され、生きる糧とされていました。

詳細な黒くこそありませんが、捕るべき鯨を定められた六鯨(りくげい)以外にも、小型の鯨類を捕獲してきたことが、幾つかの絵巻物の中に描かれているのです。
古式捕鯨が終焉を迎え、長い時間が経った今もなお、太地ではイルカや鯨を生活の糧として捕獲し続けています。
太地湾の半分が埋め立てられ、浦が大きく姿を変えても、その営みは変わらずにあるのです。

この動画では、太地町の古式捕鯨以前から現在までを振り返り、追い込み漁とのつながりを探るものです。
この動画を参考にして、建設的な議論があることを期待します。

制作の経緯及び意図

絵巻物に描かれた古式捕鯨の様子太地町の追い込み漁についての議論の中で、時折見られる意見として、「追い込み漁は1969年の太地町立くじらの博物館の開館によってイルカが必要になったために行われたのが最初であって、それ以前には行われていなかった」というものがあります。
しかし、実際に太地町について調べたり、現地を歩いていると、例えば太地町史にはそれ以前に行われた追い込み漁の記録があり、またその起源となった漁業によって村への寄付がなされていた事実がわかりますし、現地の食堂や居酒屋には、博物館開館以前に行われた追い込み漁の写真(くじら家で伺った時は、昭和36年のものだとお聞きしました)があったり、博物館開館以前から追い込み漁は行われていた形跡が多く見つかります。
更に遡れば、古式捕鯨の時代に描かれた絵巻物には、イルカやゴンドウクジラなどの姿も描かれています。
これらは古式捕鯨の対象ではありませんでしたが、もし捕獲していなかったら、ここに描かれていることはなかったでしょう。
六鯨を捕獲するときのように大掛かりなものではありませんでしたから、詳細な記録は残念ながらありませんが、古式捕鯨の魚閑期には浦人が日銭のために捕獲していたのではないかと思われます。
こうした情報や、地形に依存する追い込み漁の移り変わりに大きな影響を与えたであろう、太地町の変化についてなど、自分なりにまとめたものがあるのですが、その内容をどうにか動画にできないだろうかと思い、この動画を制作することにしました。

古式捕鯨終焉後の捕鯨業の様子。昔は人力で、轆轤を回して鯨を引き上げていた制作にあたり、一度太地の空気を吸いながら考えたいと思い、そして様々な資料の利用許可を得るために、太地町に実際に行って地元の方々と居酒屋でいろいろな話をきかせて頂いた際に、女将さんから貴重な資料を貸していただいたり、漁師さんから貴重な写真を見せていただいたりと、充実した旅行になりました。
その時に撮影したクリップを動画中に挿入することで、少しだけではありますが、単に資料だけを繋いだだけの動画とは少しだけ雰囲気の違う動画になったのではないかと思います。
太地町の朝日や夕日、そして平見の坂から町を見たところや、愛宕山の途中から見下ろした町並みを、色々な方に見ていただければと思います。

人口が急激に増えたために、宅地の造成が急ピッチに進む様子この動画では、「くじらの町 太地 今昔写真集」や「太地町史」、そして太地町役場で販売しているDVDの中に収められている動画の一つから、様々な動画や画像を引用しています。
また、太地町立くじらの博物館に収蔵されている絵巻物のスキャン画像なども使わせていただきました。
恐らく、それらを見るのが初めての人もいると思います。
特に動画は、古式捕鯨について知るにはとてもいい資料になるのではないかと感じました。
他の画像も太地という場所の成り立ちや、その変化を知るためにも必要なのではないかと感じ、利用させていただけるようお願いをさせていただいた次第です。

制作後記

博物館開館よりもかなり昔にの追い込み漁の様子この動画は、多くの方々のご協力によって制作することができました。
制作をしようと思い始めた時は、「フェア・ユースということで、勝手に作り始めてはいけないだろうか?」などということも頭をよぎりましたが、それではやはり筋が通らないということで、最低限必要な許可を得るために、太地町役場で販売しているDVDの中から動画を引用するためや、過去に出版された専門書の画像を引用するためなど、制作会社や出版社にメールを送ったり、太地町役場や教育委員会、そして太地町立くじらの博物館へ資料の利用許諾を得るために直接出向いたりなど、こうした手続に大きく時間を割くことになりました。
時間こそ掛かってしまいましたが、本来使うことのできないであろう資料を動画に使わせていただいたために、当初考えていた内容よりも、動画が充実したと思っています。

撮影データ

動画名 鯨漁の系譜(くじらりょうのけいふ)  
制作者 福田 礼(BowWorks)  
制作時期 2016年2月(予定)  
制作日数 編集等一ヶ月程度 資料の使用許可の申請なども含む
使用楽曲(使用順) 白日夢/ピンポン東山
古き良き緑/mio
イワレ探訪記/K.Y.
夢幻絵巻/ちか
「夜半ノ月」~夜道/甘茶
和風たゆたうとき/む~やん
志は死なない/秋山裕和
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